村上美保子さんは、今も相馬郡新地町になる小川公園応急仮設住宅で生活をしています。今年1月から、仮設住宅に暮らすお年寄りたちと始めた取り組みがあります。「編み物」です。
「部屋に引きこもりがちなお年寄りの方と、何か楽しめることはないか。そう考えている時に、ちょうど毛糸と編み棒をいただいて、『エコたわし』を編むことにしたんです。編んでいるうちに楽しくなってきて、丸い形や四角い形のものを編む人もいれば、器用に魚の形に編む人もいたりして……みんなで自慢しあいながらやっていましたね」(美保子さん)。
編み物を始めたことをブログなどで紹介したところ、世界中から毛糸が届いたそうです。色とりどりの毛糸を、嬉しそうに、楽しそうに編んでいくお寄りよりたち。いつしか、山のようにエコたわしが編み上げられていきました。
せっかく編んだエコたわし。ただ積み上げておくだけではもったいない。そこで村上さんは、あるアイデアを提案します。「たわしを売って、みんなで日帰りの温泉に行こう!」。どれでも1個200円。さっそくインターネットで販売してみると、想像以上に多くの人が買ってくれたそうです。
今年4月、頑張った“成果”のご褒美として、70代〜80代のお年寄り26名で日帰り温泉旅行に出かけました。みんなで温泉につかり、お寿司を食べて。それは、震災以来、久しぶりの旅行であり、心安らぐひとときでした。
震災から1年半。今も自分の心の中にあるものを、外に出すことができない人も多くいます。でも、編み物をしていると、ポツリ、ポツリと、ご主人を亡くした話、津波に追いかけられた話、怖かったときの話をする人が、少なくないと言います。
あるお年寄りは、こう言います。「編み物をして手を動かしていると、忘れられる」。今も毎週、編み物の時間は続いています。それぞれの人の、それぞれの思いが、編み物にかたちを変えて、一つずつ、積み重なっていきます。
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