宮本茂春さんと、桑折武夫さん。ともに漁師の『兄弟船』は、今も漁に出ることができないままです。
兄弟が漁をしていた海が元の姿に戻るまでには、どれだけの時間が掛かるのか、誰にも検討がつきません。「30キロ沖なら大丈夫というが、放射能がゼロになるまでは、たぶん漁はできないだろう」と兄の茂春さんは言います。
今の仕事は、沖に出てのがれき処理、放射能を調べるためのシラス漁などがメインです。しかし、これからの仕事も徐々に減ってきており、今年いっぱいで終わるのではないかと、兄弟は言います。
「シラスやコウナゴは、だいぶ数値も良くなってきたんだけれど、ヒラメ、カレイ、アイナメなどの底ものは、まだ100ベクレルを越えているからダメだな。保障もいまだにどうなるかよく分からんし、ちゃんと漁ができるようになるまでどうすればいいのか、まあ、まったく見当もつかんよ」(弟・武夫さん)。
ただ、嘆いているだけでは、何も前には進まない。今年の春、武夫さんは、同じ南相馬に新しく土地を買い求めました。
「120坪の土地を買ったんだ。本当にただ買っただけだから、家を建てるまでには、まだ時間が掛かるかもしれないけど、俺たちはここにいるしかないわけだから。もう1度、ここから、みんなの暮らしが始められるように。これからも諦めないで頑張っていくよ」。そう武夫さんは言います。
「俺たちは、海の男だから、海でしか生きられない」。目の前にある海には、たくさんの魚がいる。いつか、昔と同じように、大漁旗を掲げて、兄弟一緒に海へと漁に出ることができるその日まで。
兄弟船は、沈まない。漁師の魂の灯火よ、いつまでも。
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