仙台市からクルマで2時間半。この日、大槻勝子さんは、三陸町にある友人宅へ出向きました。友人宅は、震災前までは民宿を経営。釣りが趣味である夫の茂さんの常宿でした。しかし、海辺にたたずんでいた小さな民宿は、そのすべてを津波に奪われてしまったといいます。
朝8時に仙台を出て、三陸町に着いたのは10時半。往復で5時間をかけて夫婦が届けたのは、味噌、ねぎ、白菜、そしてスキヤキ用の肉……。いまだ思うように食べ物が手に入れられない友人に、勝子さんは折を見て食材を届けるようにしています。
「味噌があれば、味噌漬けもつくれるし、寒いから鍋物をしてもいいんじゃないかって。うん、とても喜んでくれた。私たちが来る前に海でわかめをとって、用意してくれていたみたいで。こんな立派なわかめをお土産にもらってきたよ」(勝子さん)
また、大槻さん夫婦は、所有しているアパートを被災者の方々に提供しています。「住んでいるところが水浸しになってしまった人、高齢の夫婦、一人暮らしで生活しているお年寄り……そんな人たちの力に少しでもなれたらと。こういう時は、隣近所の和が大切だから。私たちは、町内の人だけでなく、その隣の町内の人まで、みんなの顔を知っている。この地域は、昔から助け合いの心を大切にしてきたからね。特別なことをしているわけじゃない」(茂さん)
勝子さんは妹と、宮城郡七ヶ浜町でお総菜やお弁当、幼稚園の給食などをつくる会社「キッチンハウスうとう」を営んでいます。七ヶ浜町は勝子さんの故郷でもあります。七ヶ浜町の町花は『はま菊』。毎年10月から11月にかけて、七ヶ浜の海岸一帯に咲く純白のキク科の花です。
波風に耐え、けなげに咲く、はま菊の心を忘れない。「今は、お互いに助け合いながら、耐えるとき」。大槻さん夫婦は、遠くに住む友人たちを支え、地域の人たちを支えながら、今を懸命に暮らしています。
IBEでは、被災地で暮らすπの仲間たちを励ますメッセージを募っています。メッセージは、私たちが責任を持って被災者の方へお届けします。私たちに今できること。ぜひ、皆さんの心を込めた「言葉」と「思い」をこちらまでお寄せください。ファックス(0563-62-5859)でもたくさんのメッセージ、お待ちしております。